毎週土曜は寝転がる日です

職場に韓国出身の人がいます。まだあまり日本語はうまくないのですけど、こちらが少しゆっくり話せばちゃんと通じるし、向こうもやたら早口なんですけど何とか聞き取れます。


という出だしですが、私は韓国(という国そのもの)はあまり好きではありません。理由は昨今の情勢を見ていればもう分かってもらえるのではないかと思います。ですが、目の前にいる個人を否定する理由にはなりません。だけれども彼を色眼鏡で見てしまっていることも確かでした。
日本人は勤勉だと評されても、私のようにぐうたらもいるわけで、韓国人は○○だと言う一意的な評価は反例を知らないことによる思い込みなのだ、と考え、私は彼に積極的に声をかけることにしていました。


人見知りが激しいのか、なかなか会話が続きませんでしたが、「私は何とかあなたとコミュニケーションをとりたいのだ」という気持ちが通じたのか、段々と話せるようになっていました。
そんな中、竹島問題にまた動きがありました。私は(彼がメディアでよく取り上げられているタイプの韓国人なら)すごくまずいなぁ、と思っていたのですが、金曜の夕方、それは杞憂だったことが分かります。


定時後、14階のエレベータホールから夕日がよく見えました。その日は霧雨が降っていたりで空気はよく澄んでいたのです。山と雲が光を加工して、とんでもない景色を作っていました。うへええすげえええと眺めていると、彼がエレベータホールに来ました。
お疲れ様でした、と挨拶すると、彼はずいぶん発言を悩んでから、「綺麗ですね。冬はもう終わったみたいだ」と。
「ええ、いいものが見られました」とだけ返すと、彼は微笑んでエレベータに乗り込んでいきました。


綺麗なものを綺麗と素直に評せる、彼はそういう人間だった。この会話に私は何か、とても深い裏の意味が含まれているように感じていました。


「日本は綺麗です。あなたの幻想ももう終わったみたいだ」
「ええ、まったく。いい人に出会えた」