2つの世界

自分はいつかは大人になるのだろうなどと曖昧に考えてきたまま、いつの間にか年齢だけは大人になっていた。
テレビなどで活躍するアイドルたちは「年上の人間」、という認識がずっと今まで続いている。気づいてみれば最近出てきたアイドルはみんな年下だ。下手をしたら私より年下の芸能人が結婚したりする。子供の世界、大人の世界という2つの世界は、はっきり分かれているように感じていた。


高校生は大人一歩手前で、難しいこともいろいろ知っているなどと幼い時に考えていたけれど、塾の先生という立場で彼らを眺めてみると、中学生はまだまだ考えが固まっていない、高校生は出来てきた価値観と自分の幼児性が乖離しているのに葛藤しているようだ、と感じるに至った。
つまり高校生はまだいろいろ知ってなどいない。いつかある日に突然大人側に回るなんてありえないのだ。
私自身も高校生まで恐ろしいほど世間知らずで、同級生だった女の子の存在がなければ、自分も大人の世界側に回る時期であることを自覚しなかっただろう。日々妄想に生きる私は、自分がいれば世界はそれで完結していた。


……卒業研究で私が最も苦労している点は、内容の難しさでも実験操作の難易度でもない。人間関係だ。自分ひとりでルンタタしていた私は、やはりどこか孤立している。卒業研究は仲間の助けがなければ完結できないところがたくさんある。あいつが嫌い、こいつはムカつく、では物事が進まなくなってきている。
やる気になれば一人で大抵のことはこなしてきた。人に甘えるのは恥ずかしいことだと思っていた。人に何か頼むくらいなら失敗したほうがマシだと考えていた。


でも好き勝手やればどうにかなる世界というのも実在する。子供の世界だ。
子供の世界のルールがいよいよ通じない現実に、ようやく私は立たされている。


文章全体の訳:中間発表の資料作りが間に合いません。