母について

母は化粧をしない。どこかに出かけるときはとても薄い化粧をするが、化粧をしないほうがよほど綺麗な人であるように見える。私はこうした人に今まで出合ったことが無い。母は、自然体が一番綺麗な人だ。
私は小学生ぐらいまでは母にべったりで、始終くっついていないと気が済まなかった。家族からは「お前はマザコンなんじゃあ! ヘビーマザコンじゃ!!」などと言われていた。中学生ぐらいになると反抗期むき出しになってそれは収まったが、今でも母を尊敬していることは事実だ。
母は完璧だ。およそ感情的という言葉からはかけ離れているような人だ。機嫌が悪そうなところを見たことが無い。当然いやなこともあれば彼女もイライラするのだろうが、それは絶対に顔に出ない。22年間、そうだった。ついカッとなることも無く、常に冷静。それでいて温和。いつか母のような物腰の人間になるんだと私は決心している。


ところでその母が最近、どうにも疲れているようなのだ。私が何か相談すると、逆に母が「こんなことがあったんだ」と私にいろいろ話し始めることが多くなった。テレビを見ながらウトウトしてしまうようになった。およそ立ち振る舞いが完璧な母には珍しい……と思ったが、もう母もいい年なのだ。
……ということに気がついた今年の夏、私は大学院に行く予定を変更した。早く働いて、母の負担を減らさねばなるまい、と思った。私の目標である母には長く生きてもらわないといけない。


ん? 父ですか? そういえば最近口利いてませんね? (゚3゚)アルェ?